ワインをめぐる不正事例
●不凍液混入事件 1985年
オーストリアでのこと。ドイツに輸出された甘口ワインから車のラジエーターに入れる不凍液(ジエチレングリコールDEG)が検出されるという世界を震撼させた事件がありました。不凍液は有害物質ですが、これを巧妙に混ぜると甘味となり丸みとコクが強調されるため、高級ワインの偽装を目的に不正に添加されました。当時ヨーロッパの検査機関やワイン業界では分析の対象にされないことを利用し、オーストリアで意図的に混入されました。押収されたジェチレングリコール入りワインの量は過去10年に渡りこの不凍液入りワインが造られたことを証明する5万ℓもの量でした。ドイツではテーブルワインクラス(Tafelwein)のワインにブレンドして「トロッケン・ベーレン・アウスレーゼ(Trocken beerenauslese)」など最高級の甘口ワインとして売られ、輸出されたのです。その頃、貴腐ワインが人気となっていた日本でも被害が確認されています。輸入先である国内の各ワインメーカーが検査の結果を受けて安全宣言行いましたが、後日消費者が国産ワインを検査機関に持ちこんだことをきっかけに、混入の事実を隠蔽していたことが発覚しました。この事件により消費者のワインへの不信感を招き、ワイン人気は一時低迷する結果となしました。
●ワイン愛好家を装ったオークション詐欺 2012年
クリスティーズなどのオークションハウスでは、ヴィンテージのワインを求めて世界の富豪が集まります。中国系インドネシア人のワイン愛好家ルディ(後に偽名と判明)は本物のコレクターを装い会場に出入りし、偽装ワインを出品していました。チリワインに古いポートワインをブレンドし、ハーブや醤油で絶妙な風味を醸し出し、入手困難な最高級ワイン“ルパン”や“ペトリュス”、“ロマネコンティ”などのヴィンテージのフェイクワインを偽装。事件は落札者からの申告により明らかになりました。FBIに逮捕された時、部屋にはインドネシアで印刷した偽装ラベルやコルクが散らばっていたそうです。
●大手ネゴシアンによるアペラシオン詐欺 2013年
1832創業の国際的に知られた有名ネゴシアンによる詐欺事件がありました。許容範囲の15%を超えて異なるアペラシオンのワインを混ぜたり、価値をあげるためにヴィンテ-ジ(醸造年)の偽表示、古木から収穫したワインではないのに「Vieille vigne」(ヴィエイユ・ ヴィーニュ:古木)とのラベル表示をするなど、約2百万本が偽装販売された疑いで身柄を拘束。約4年の裁判の後、2016年に企業の中心人物6人は罪を全面的に認め罰金と執行猶予の決定を受け、よって事件の詳細は明らかにされないままに裁判は終了したと報道されています。